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「未来世紀ブラジル」


支配人・竜巻野郎が愛して止まない映画だけを上映する、webの中のミニシアター「快楽座」へようこそ。
今週はテリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」だ。

「ブラジル」とは南米の国名ではない。
「理想郷」という意味だ。
20世紀のある日、強大な権力で国民を管理する超官僚主義国家で・・・。
情報省に勤める官僚サムは、波風立てずに生きている。
そんな退屈な日々とは裏腹に、彼は夢の中ではスーパーマンであり、大空を飛び回る。
そして、絶世の美女とのロマンスも。
ある日、彼は夢の中の美女と瓜二つの女ジルと出会う。
だが、それが契機であったかのように、エリートであったはずの彼が国家から自由を束縛されていき・・・。

設定はジョージ・オーウェルの小説「1984」と酷似している。
そして、この映画の結末も「1984」同様、陰鬱である。
しかし、テリー・ギリアム監督がこの映画で試みようとしたのは「1984」の焼き直しではない。
「未来世紀ブラジル」は主人公サムの現実=超官僚社会と、彼が見る夢=美しさに溢れた理想郷が交互に描かれている。
たとえ暗黒の未来が訪れようと、人間の夢=想像(創造)力は誰からも支配されない。
絶望的なラスト・シーンにも関わらず、それがこの映画のテーマだ。

ところで、まったく皮肉なことにこの映画は完成後、映画の内容と同じような「バトル」を強いられることになる。
契約書に書かれた上映時間よりも17分長い!それを理由に監督から取り上げ、「大衆受けするコマーシャルな映画」に改変しようとするユニバーサル映画社長シド・シャインバーグと、オリジナルの「未来世紀ブラジル」を守り抜こうとするテリー・ギリアム監督の攻防。
詳しくはジャック・マシューズ著「バトル・オブ・ブラジル『未来世紀ブラジル』ハリウッドに戦いを挑む」(ダゲレオ出版)を読んで欲しい。
この本はホントに面白い(残念ながら絶版。古本屋でゲトせよ!)。

こうしたスキャンダルはともかく、「未来世紀ブラジル」は独創的なビジュアルに溢れた映画だ。
「夢」の超現実的なシーン。
サムが大空を飛ぶシーンはもちろんだが、武士を想起させる巨大なモンスターとのバトル、そして、ボロを纏った不気味な集団(なぜか日本の「おかめ」のようなマスクを付けている)など、特異なイマジネーションが炸裂している。

また、「現実」のシーンにも様々な仕掛けが施されている。
無意味なほどにパイプ(ダクト)が設置された住居。
キーボードがタイプライターのようになっているパソコン。
情報省の至る所にテレビが設置されているが、なぜかレトロなデザイン。
戦闘機メッサー・シュミットを再利用した一人乗り自動車。
よくもこんななものを集めてきた!と思わず拍手したくなるようなものがてんこ盛りだ。

そして、魅力的で個性溢れる登場人物たち。
いつも何かに怯えたような小心者サム(ジョナサン・プライス)、強くて美しいヒロイン・ジル(キム・グライスト)、腕のいいダクト修理職人しかし裏ではテロリストのバトル(ロバート・デ・ニーロ)。
それ以外にも癖がありすぎるキャラクターが目白押し。

「こんな映画は観たことがない」

ユニバーサル映画社長シド・シャインバーグは嫌味を込めてこの言葉の発した。
しかし、我々は彼が発したのとはまったく逆の意味で、この言葉を発することになるだろう。

「こんなにへんてこで、でも面白い映画は今まで観たことがない」と。

「未来世紀ブラジル」
BRAZIL
監督 テリー・ギリアム
出演 ジョナサン・プライス キム・グライスト ロバート・デ・ニーロ
1985年イギリス=アメリカ合作 カラー 142分
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