「作品」と「作者」は別物、と言われることがある。
ヒューマニズムに溢れた作品の作者が、必ずしも人格者とは限らない。
「プラトーン」や「天と地」の映画監督オリバー・ストーンはアジア系とのセックスが大好きで、来日すると吉原詣でをしてるらしいしな。
これは「巨人の星」「あしたのジョー」の原作者、梶原一騎の評伝。
幸か不幸か?これらのアニメ(多分、再放送)を観ていた少年時代、俺は梶原一騎についてほとんど何も知らなかった。
「プロレススーパースター列伝」(これは辛うじてリアルタイムで読んでいた)に時たま出てくる、角刈りサングラスの怪しいオヤジ。
あるいは、猪木率いる新日本プロレスにタイガーマスクを送り込んだ黒幕。
そんな印象。
「巨人の星」「あしたのジョー」そして「空手バカ一代」のオリジナル・マンガを読んだのは大学に入ったばかりの頃。
とにかく時間はたっぷりあった。
学校の近くにあるマンガをずらりと揃えた喫茶店で、子供の頃、熱狂的に観ていたアニメの原作マンガを読み耽った。
圧倒的な迫力。
そして、直ちに続きを読まずにはいられないストーリー展開。
こんな面白いマンガだったなんて。
今はどんなマンガ原作を書いているのだろうか?
それからしばらくして、梶原一騎は死んだ。
本書では、栄光の頂点にいた男が、スキャンダルによって一気に転落していく様が描かれる。
彼の周囲の人々は「まるで子供がそのまま大人になったよう」と、駆け出しの頃の梶原一騎を回想する。
それがやがて、常軌を逸した暴力とセックス・・・いわば狂気の世界の住人と化していく・・・。
絵本作家の長谷川集平が映画「竜二」の批評で「暴力を振るい、周囲の人々を傷つける主人公に心を寄せてはいけない」というようなことを書いていた。
安易に「アウトロー」を美化することへの嫌悪だ。
梶原一騎の作品群は、彼自身の人生・・・「栄光と破滅」と切り離すことは出来ない。
作画担当者との奇跡のコラボレーション「巨人の星」「あしたのジョー」も、極真カラテの宣伝媒体となってしまった影丸譲也との「空手バカ一代」も。
そして、飛雄馬、ジョー、そしてマス・オーヤマに抱いた熱い想いを、梶原一騎にも感じずにはいられない。
もちろん暴力への憧れではなく、何度倒されても立ち上がる不屈の闘志を持った男として。
とはいえ、身近にこんな怖いおじさんがいたら、確実に逃げるけど。
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