支配人・竜巻野郎が愛して止まない映画だけを上映する、webの中のミニシアター「快楽座」へようこそ!今月は【ザッツ・セクシャルエンターテイメント!】と銘打ち、「セックス」をテーマにした映画の特集上映を行う。
劇場公開時、本作のポスターには「第1回ビートたけし監督作品(第5回北野武監督作品)」とクレジットされていた。それまで発表していた「その男、凶暴につき」「3-4x10月」「あの夏、いちばん静かな海。」「ソナチネ」とは路線を変えて、コメディということもあり、こういう表記をしたのだろうが、これは紛れもなく「北野武監督作品」だ。
たけしの映画はヨーロッパで評判がいい(という記事をよく見る)。たけし映画の熱狂的なファンを「キタニスト」、初期の作品で強調されていた「画」の「青さ」を「キタノブルー」と呼ぶらしい。日本を代表するアーティスティックな映像作家ということか?
たけし映画がアートかどうかは良く知らないが、俺が彼の映画から感じるのは、不器用なほどの「一方向性」だ。
たとえば、監督デビュー作「その男、凶暴につき」では、主人公の刑事の殺伐とした日常と、彼の体内で芽生えつつある凶暴性を表現するために、ひたすら彼が歩くシーンを挿入している。カメラは彼を横移動で追い続け、BGMにはエリック・サティの「グノシエンヌ」。これを何度もくりかえし。
多分、映画をよく知っている人が監督をしたら、彼の日常シーンを積み重ねて・・・みたいな構成を考えるだろう。そういうセオリーを(知らないから?)無視したところが斬新で、「その男、凶暴につき」は評価されたのではないだろうか?
さて、本作「みんな~やってるか!」は、お世辞にも「面白いコメディ」とは言えない。全盛期のたけしのような「毒」は見られず、苦笑せざるを得ない「どーしようもない」ギャグのオンパレード。天才たけしをもってしても、「コメディ映画」とはこんなに難しいものなのか?そういえば、映画館で観ている時に溜息をついている人が多かったなぁ。
この映画で描かれているのは、「とにかく女にもてたい!そして、いい女とセックスしたい!」という主人公の「一方向」的なエネルギー。やたら直球な(悪く言えば安易、悪ノリな)展開が続き、笑うことはできないが、シュールな味わいを楽しむことはできる。
セックスをするために、男はかくも必死にならなければいけないのか?
そして、それは端から見れば「くだらねー」ということなのか?
なんだか他人事に思えないところが嫌だな。
「みんな~やってるか!」
GETTING ANY?
監督 ビートたけし(北野武)
出演 ダンカン 大杉漣 ビートたけし
1994年日本映画 カラー 110分
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