快楽亭日乗R　玄関少年少女ブルース

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玄関少年少女ブルース

もちろん携帯電話もインターネットもなかったけれど。
生きていく上で困らなかったし、他に刺激的なメディアがたくさんあったし。

中学1年の時に同じクラスになったIくんの影響で、ニューミュージック（なんて古臭い言葉）やポップスを聴くようになった。彼の家はわりと裕福で、中島みゆきとかユーミンとかサザンの新作がリリースされる度に購入し、俺に貸してくれた。当時、俺の小遣いは1,000円/月だったので、LPをバンバン買える彼がうらやましかった。

Iくんから借りたレコードを大事に持ち帰り、オヤジのステレオにカセットデッキを接続してダビングした。当時はCDなんてものがなかったから、ミュージックテープだよ！

Iくんのイチオシは中島みゆき。彼に勧められるまま、当時リリースされていた全アルバム、全シングルをダビングさせてもらった。「臨月」「寒水魚」「予感」と、あの頃の中島みゆきのアルバムはめちゃめちゃ完成度が高く、何度もくりかえし聴いては痺れてた。いつしか俺も熱狂的な中島みゆきファンに。

なので、中学1年の途中から高校を卒業する時まで、毎週火曜日の朝はひどい寝不足だった。もちろん「中島みゆきのオールナイトニッポン」を欠かさず聴いていたからだ。シリアスな歌と爆笑トークのギャップに痺れ、ますます中島みゆきを愛するようになっていた。

火曜日の朝、眠い目をこすりながらIくんと前夜の放送について話すのも愉しかった。「ひとり上手」「めんねの日記」「家族の肖像」などなど懐かしいコーナーの数々よ。勢いあまって投稿もしたけれど、俺たちの葉書が読まれることはついになかった。

大学受験の時も、月曜の深夜は勉強の手を止めてラジオを聴いていた。いや、木曜と金曜もか。夜中にひとりでゲラゲラ笑っているのだから、何をしてるかは家族に丸分かり。そんな適当な感じだったので、秋の三者面談ではお袋が泣き、担任からは来年も頑張れと言われていた。なのに、どういうわけか合格してしまったあの年の春。6年間聴き続けた「中島みゆきのオールナイトニッポン」が最終回を迎えることになった。

Iくんとは別の高校に通っていたので、中学卒業後は疎遠になっていたのだけれど、これは一大事とばかりに連絡を取り合い･･･

1987年3月31日火曜日大安吉日。俺とIくんは有楽町のニッポン放送玄関前にいたんだ。

■あの感動がYouTubeで甦る！
【中島みゆきのオールナイトニッポン　最終回】

まさか二十余年を経て、また聴けるとは。
便利な時代になったね。

てか、いつの間にか携帯電話もインターネットもなしには生きられないんすけどぉ！