快楽亭日乗R　蟲師

スポンサーサイト

上記の広告は１ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--------(--:--) :
スポンサー広告 :

蟲師

元々、映画というものは「嘘」なのである。
映画の中の世界、登場人物、事件。それらはすべて観客の心を揺り動かすために作り出されたもの。

あくまでリアリティにこだわり、真実の物語であることを提示する映画もあれば、虚構と現実を入り混じらせ、観客を煙に巻く映画もある。しかし、大方の映画はそれが真実かどうかよりも、面白いかどうかに腐心している。

ところで、この映画は、まったく架空の生業である「蟲師」を、あたかも実在していたかのように見せることに力を注いでいる。

大いなる嘘、であるが。
オダギリジョーというある意味、異人のような（蟲師のような）雰囲気をもつ役者をキャスティングしたこと。人々の生活や風習に密着した「蟲」の存在。丁寧かつ大胆なビジュアル・イフェクツ。そして、まだ完全に文明が入り込んでいない明治初期という時代設定。

すべてが「蟲師」にリアリティを持たせるために機能している。

大きなストーリー展開がないこともまた、効果を上げている。
まるで、かつて日本に存在した「蟲師」の紀行映画を鑑賞しているような気分にさせられる。
大友克洋は「蟲師」の存在と彼らにまつわる世界を、圧倒的なパワーで我々に提示してみせる。

さて。
この映画のヒロインは蒼井優。
と言っても、飛び抜けて際立った存在ではなく、映画の中で綴られるいくつかのエピソードのうち、１エピソードの登場人物にすぎないのだが。

彼女は中性的な女の子を演じることが多い。
ちょい垢抜けないルックスとサバサバした雰囲気がそうさせているのだろうか。
セックスを感じさせない女優。

この映画の中では、代々「蟲」の記録を残す「筆記者」の家系に生まれた淡幽（たんゆう）という女性を演じている。かなりクールなキャラクターだが、妙に生々しく、ほのかにセックスの匂いを漂わせている。オダギリジョーとのセーックス！なんてシーンはないのだが。

もちろん蒼井優は素晴らしい女優だけれど、監督である大友克洋が、蟲師の世界を実在するかのように築き上げた効果も多分にある。

虚構ではなく、現実の肉体をもった女のセックスの匂い。