精神病院を舞台にした映画といえば「カッコーの巣の上で」をすぐ思い浮かべるけれど、「クワイエットルームにようこそ」はそれとはまるで違うことを描こうとしている。
精神病患者を社会的異物として捉え、非人間的に管理し、最終的にはスポイルしてしまう病院=社会と、懲役を逃れるため精神病を装ってきた主人公(ジャック・ニコルソン)の戦いを描いた「カッコーの巣の上で」。
一方、「クワイエットルームにようこそ」は自殺未遂と勘違いされて精神病院に収容された主人公(内田有紀)が、そこでの一週間、自分とは何か、自分らしさとは何か探っていく物語となっている。
前者が外部との接点を描いているのに対して、後者は人間の内面によりクローズアップしているように思える。
新しい仕事が上手くいかない。彼氏との関係も上手くいかない。
20代後半のバツイチ女性ライター明日香は、苛立ちと不安を抑えるため、酒と薬物を大量に摂取してオーバードーズを起こしてしまう。目覚めれば閉鎖病棟のベッドで全身拘束。
自分自身では正常だと思っていても、第三者から見たら普通じゃない。冷静に考え、冷静に振舞っているつもりでも、他者の目はそう見てくれない。
入院生活の中で、思い出したくなかった過去がフラッシュバックのように甦る。
平凡に生きていた前夫(塚本晋也)の期待に応えられなかった自分。しかし、クリエイティブな今彼(宮藤官九郎)の期待にも応えられていない自分。そして、父親の期待を大きく裏切ってしまった自分。
「他者の期待に応える自分=Me」というのは間違いなく自我を構成する一要素であるけれど、それを取り除いた時に現れる「本当の自分=I」の存在に気付いた時、主人公は救われたのではないだろうか。所詮、自分は自分でしかないのだと。
松尾スズキ監督の前作(初監督作)「恋の門」も、ヒロインの期待に応えようとする二人の男の姿を描いていた。男たちはプレッシャーに押し潰されそうになっても、とことん期待に応えようとする。それが男の意地だから。
しかし、「クワイエットルーム」の内田有紀は苦しみながらも期待に応えることを止めてしまう。今彼とは別れ、多分、死んだ前夫や父親の呪縛からも解き放たれたことだろう。
頭では分かっていても、男はなかなか鎧が脱げないんだよね。
「恋の門」のようなお祭バカ映画ぶりは見事に封印されているが、女性目線でこんな映画を作れてしまう松尾スズキは間違いなく才人。
内田有紀、蒼井優、りょう好演。
大竹しのぶ怪演。
■DMMもっこり横丁で楽しくお買い物♪「クワイエットルームにようこそ」監督・脚本・原作 松尾スズキ
出演 内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優
2007年日本映画 カラー118分
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クワイエットルームにようこそ - Trailer
■DMMもっこり横丁で楽しくお買い物♪松尾スズキ
「クワイエットルームにようこそ」文藝春秋05/12/15 Release!
[文庫版][ハードカバー]
■DMMもっこり横丁で楽しくお買い物♪「恋の門」監督 松尾スズキ
出演 松田龍平 酒井若菜 松尾スズキ
2004年日本映画 カラー114分
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■DMMもっこり横丁で楽しくお買い物♪「カッコーの巣の上で」監督 ミロス・フォアマン
出演 ジャック・ニコルソン ルイーズ・フレッチャー
1975年アメリカ映画 カラー133分
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