Webの中のミニシアター快楽座へようこそ!ここは支配人・竜巻野郎が愛してやまない映画だけを上映する映画館。しばらく休業していたが、今後はゲリラ的に上映していくぜ!
一男「さよなら!俺!」
一美「さよなら!わたし!」
8mmフィルムの粗い映像の中で、走って追いかけてくる一美の姿がだんだん小さくなって・・・
山中恒の「おれがあいつであいつがおれで」を映画化した「転校生」のラスト・シーンだ。原田知世も富田靖子もいないけれど、大林宣彦監督の「尾道三部作」の中でも「生」な少年少女を描いた映画として、いつまでも心に残る1本だ。
尾道の片田舎に住む中学3年生一男(尾美としのり)。ある日、クラスに転校生がやってくる。一男の幼馴染みである一美(小林聡美)だ。しかし、妙に馴れ馴れしい一美に対し、一男は辟易。学校の帰り道、ふとしたことがきっかけで、2人は抱き合ったまま神社の階段から転がり落ちてしまう。気が付くと、互いの心と身体が入れ違っていて・・・
異性に興味がありながら、恥ずかしさが邪魔をして互いを理解しあえない少年少女期。しかし、心と身体が入れ替わってしまったら、強制的に互いの性の良いところ、悪いところ、そして秘密にしておきたい部分も分かってしまう。
そして、互いの心と身体が元に戻った時、一男と一美は互いに切っても切れないパートナーになっていた。まるで自分のことのように相手を思いやることができるからだ。
ところで、ちょっと前から
週刊ビッグコミックスピリッツで「転校生★オレのあそこがあいつのアレで」というマンガが連載されている。
設定はまんま映画「転校生」だ。女子高生・梨佳のクラスに幼馴染みの茂が転校してくる。イケイケになっていた茂はさっそく梨佳にセックスを迫る。深く考えずに身体を許した梨佳は、その後、茂にとって都合のいい女になる。ある日、いつものように神社でセックスをしている最中、ふとしたことから2人は階段から転がり落ちてしまう。気が付くと、梨佳の股間には茂のペニスが、そして茂の股間には梨佳のヴァギナが・・・
古泉智浩の絵柄は猥雑で、生々しい。互いの性器が入れ替わっていることに気付いて、2人がしたことはセックスだ。ペニスを生やした女子高生が、ヴァギナをもつ男性とセックスをする。なんとも背徳的なエロ。
今週は連載5回目だが、性器が入れ替わったことで、互いの性格にはっきりと変化が現れているところが面白い。かつてヤリチンだった茂はすっかりしおらしくなり、内向的だった梨佳は浮気(クラスメイトの女の子とセックス!)に走る。
大林宣彦版「転校生」のファンからすると、「けしからん!」という感じなのかな?でも、いつもと違う性器が股間に付いていたら、試してみたいと思うのは当たり前だろう。よく考えたら、心と身体が入れ替わっても、同じことができるんだよな。
ところで、大林宣彦の映画が多くの人に愛されているのは「美しい青春」を描いているからではないだろうか?「尾道三部作」といわれる「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」はいずれも思春期の少年少女が大人になっていく物語だが、「転校生」は別にしてセックスの匂いはとても希薄だ。「時をかける少女」の原田知世はラストシーンで、まるで抜け殻のような大人になっている。「さびしんぼう」は実は母子相姦の話だと思うのだが、尾美としのりは母親に勃起したりはしない。
まるで、記憶の中で整理された「美しい青春」。
自分の思春期を振り返ってみると、セックスにからんだ記憶は顔から火が出るほど恥ずかしいものが多いもんな・・・
「転校生」
監督 大林宣彦
出演 尾美としのり 小林聡美 樹木希林
1982年日本映画 カラー 112分